朝が変われば、健康が変わる。高齢者におすすめの「長寿の朝習慣」
はじめに
「朝、なんとなくぼーっとしてしまう…」
「昔に比べて、身体が重くなった気がする…」
そんな変化を感じる方は多いのではないでしょうか。
年齢を重ねると、朝スムーズに動き出すのが難しくなるのはごく自然なことです。
ですが、この“朝の時間”の使い方次第で、将来の健康に大きな差がつきます。
人の体にとって、規則正しい生活リズムは非常に重要です。
毎日のルーティーンを作り、リズムを整えてあげること。それがスムーズな起床につながるだけでなく、健康寿命にも大きな効果があることが、最新の医学研究からわかってきました。
本記事では、科学的根拠に基づいた「長生きする人の朝習慣」をご紹介します。
特別な準備は必要ありません。 今日から少しずつ、ご自身のペースで取り入れてみてください。
|
① 起床後は『コップ1杯の水』

~寝起きの一杯が「命」を守る~
「朝起きたら、まず何を飲んでいますか?」
実は人は、寝ている間に呼吸や汗で水分を失っています。
その量は、およそコップ1~2杯分。
そのため朝起きた時点では、体は「軽い脱水状態」になっているのが普通です。 水分が減った血液は少し濃くなり、流れにくいドロドロ状態…。
しかも朝は、体内時計の影響で血圧が上がりやすい時間帯です。
この状態で、何も飲まずに動き出すと、血栓ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まることが知られています。
だからこそ大事なのが、寝起きの1杯。 失った水分を補うことでリスクを遠ざけます。
さらに、胃腸が刺激されて「大蠕動(だいぜんどう)」が起こりやすくなり、お通じの改善にもつながります。
\ここがポイント/
-
のどが渇いていなくても飲む 年齢とともに「渇きセンサー」は鈍くなります。「飲みたくなくても飲む」を習慣にしましょう。
-
常温の水か白湯がおすすめ 起きたらまずコップ1杯(約200mL)。冷たい水より、胃腸への負担が少なく安心です。
「たった一杯で、体はちゃんと守れます。 明日の朝から、ぜひやってみてください。」
② 窓を開けて日光浴

~ガラス越しでは意味がない? 骨と体内時計のスイッチ~
朝の光には、2つの大事な役割があります。
1つは、体内時計をリセットして、夜の良質な睡眠を作ること。
もう1つが、骨を強くする「ビタミンD」を作ることです。
ここで、医学的にとても大事な注意点があります。
ビタミンDは、太陽の光に含まれる UVB(紫外線B波) を皮膚に浴びることで合成が始まります。
しかしこの UVBは、窓ガラスをほとんど通過できません。
つまり、
- 「窓越しに日向ぼっこ」
- 「ガラス越しに朝日を浴びる」
これでは、ビタミンDはほとんど作られないんです。
\ここがポイント/
-
必ず「直射日光」を浴びる
ベランダに出るか、窓を開けて外の光を浴びましょう。 -
起床後30分以内がおすすめ
体内時計のリセット効果が高まります。朝の覚醒を高め、夜のスムーズな眠りをサポートします。 -
時間の目安
夏なら木陰で 5〜10分程度
冬なら 30〜40分程度
外に出にくい場合は、手のひらを太陽に向けるだけでもOK。
「朝の光は、睡眠も骨もまとめて整えるスイッチ。
ガラス越しじゃなく、直射日光を浴びましょう。」
③散歩などの軽い運動

「運動は体に良いと分かっているけれど、おっくうで…」 そんな方にこそ知ってほしい事実があります。
実は、健康のために「1日1万歩」も歩く必要はありません。
The Lancet Public Health(2025年)の大規模メタ解析では、
1日約7,000歩の歩行で、死亡や病気のリスクを下げる効果が十分に得られることが示されています[1]。
■ 朝の「ちょこっと歩き」がおすすめ 。特に朝、軽く体を動かすとこんな良いことがあります。
-
血流が良くなり、体がシャキッと目覚める
-
体内時計が整い、夜ぐっすり眠れるようになる
-
足腰が強くなり、転倒防止につながる
■ 無理なく続けるコツ 大事なのは「回数」や「距離」よりも、「やめないこと」です。
- 「ニコニコ」ペースで 隣の人と会話ができるくらいの速さで十分です。
- 分けてもOK 朝15分、夕方15分など、分けても効果はあります。
- 天気の悪い日は家の中で 廊下を歩いたり、ラジオ体操をするだけでも立派な運動です。
「今日は5分だけ外に出てみようかな」 そんな気軽な気持ちで始めてみてください。 その小さな積み重ねが、10年後の元気な体を作ってくれます。
④起床時間を揃える

④ 起床時間を揃える
―「あと5分」が体内時計と血管を乱す―
「あと5分だけ…」
つい二度寝してしまうこと、ありますよね。
しかしこの習慣は、体内時計や血管の健康にとって大きな負担になることが分かっています。
■ 起床時間の“ばらつき”が体に与える影響
研究では、
就寝時間や起床時間が日によって不規則な人ほど、心臓病・脳卒中などの心血管リスクや死亡リスクが高いことが報告されています。[2]
この関連は、単に「睡眠の長さ」だけでは説明できず、毎日同じ時間に寝て起きる“規則性”が健康状態と強く関係していることが示されています。[2]
起床時間がバラバラになると、
-
自律神経の切り替えがうまくいかない
-
血圧や心拍が不安定になりやすい
-
血管に慢性的なストレスがかかる
といった状態が起こりやすくなります。
■ 二度寝は「睡眠慣性」を強めてしまう
二度寝やスヌーズ機能を使うと、
脳は「起きる・また寝る」を何度も繰り返すことになります。
この状態では、睡眠慣性と呼ばれる現象が起こりやすく、
-
起床後しばらく頭がぼんやりする
-
判断力や集中力が低下する
-
午前中の活動が億劫になる
といった影響が出やすくなります。
高齢者では特に、
この“ぼんやりした時間”が 転倒やケガのリスクにつながることもあります。
■ 「長く寝すぎる」こともリスクになる
疫学研究では、
睡眠時間が9時間以上になる人は、7時間前後の人に比べて、死亡や心血管疾患のリスクが高いという傾向も報告されています。[3]
二度寝を繰り返すことで、
-
起床時刻が遅れる
-
睡眠時間が長くなりすぎる
-
生活リズムが乱れる
という悪循環に入りやすくなります。
■ 実践のポイント
-
起きたらすぐにカーテンを開ける
-
平日も休日も、同じ起床時間を意識する
起床時間を揃えるだけで、
体内時計が整い、血圧や自律神経のリズムも安定しやすくなります。
「早く寝られなかった日でも、起きる時間だけは変えない」
それが、脳と血管を守り、健康寿命を伸ばす習慣につながります。
⑤実は簡単!?マインドフルネス

― 頭と自律神経を休ませる“今ここ”の習慣 ―
「マインドフルネス」という言葉、
最近よく聞くけれど、
なんだか難しそうと感じていませんか?
実はマインドフルネスは、
特別なことをする必要はありません。
とてもシンプルに言うと、
👉 「今、この瞬間に意識を向けること」
それだけです。
■ 瞑想じゃなくても大丈夫
マインドフルネスというと、
座って目を閉じて行う「瞑想」を思い浮かべる人が多いですが、
必ずしも瞑想である必要はありません。
日常生活の中で、こんなことも立派なマインドフルネスです。
-
食器洗いのとき
→ 手に当たる水の温かさ、泡の感触に意識を向ける -
散歩をしているとき
→ 足の裏が地面に触れる感覚を感じる -
お茶を飲むとき
→ 香りや味をゆっくり味わう
ポイントは、
「考えごとをせず、今この瞬間の感覚に集中すること」です。
■ なぜ体にいいの?
私たちの脳は、
・過去の後悔
・未来の不安
を考えている時間がとても長く、
それが ストレスや自律神経の乱れにつながります。
マインドフルネスを行うと、
-
交感神経の過剰な興奮が抑えられる
-
自律神経が整いやすくなる
-
不安感やイライラがやわらぐ
効果が期待できます。
特に高齢期では、
「何もしない時間=不安になる時間」になりがちですが、
意識を“今”に戻すだけで、心と体は落ち着きやすくなります。
■ 実践のポイント
-
1回 1〜2分でOK
-
正解・不正解は気にしない
-
雑念が出ても「気づいて戻る」だけで十分
「うまくやろう」としないことが、一番のコツです。
マインドフルネスは、道具もお金もいらない、脳と自律神経の休憩時間。
「今この瞬間に戻る」
それだけで、毎日の疲れ方が変わってきます。
まとめ
― 朝の小さな習慣が、これからの10年を変える ―
年齢を重ねると、
「朝がつらい」「動き出しに時間がかかる」
と感じることが増えてきます。
ですが本記事で紹介したように、
朝の過ごし方を少し整えるだけで、体と心は確実に変わります。
今回ご紹介した「長寿の朝習慣」は、どれも特別な道具や強い意志は必要ありません。
-
起きたら コップ1杯の水を飲む
-
窓を開けて朝の光を浴びる
-
散歩などの軽い運動で体を目覚めさせる
-
毎日同じ時間に起きる
-
今この瞬間に意識を向ける(マインドフルネス)
どれか一つでも構いません。
「全部やらなければ」と思う必要はありません。
大切なのは、
できることを、できる範囲で、続けること。
朝の習慣は、
・体内時計を整え
・血管や脳を守り
・転倒や病気のリスクを減らし
・毎日を前向きに過ごす土台
になります。
「今日の朝は、少しだけ丁寧に過ごしてみよう」
その一歩が、
元気に長生きする未来につながります。
無理せず、ご自身のペースで。
明日の朝から、ぜひ試してみてください。
参考・引用文献
[1]Ding D, et al. Lancet Public Health (2025).https://doi.org/10.1016/S2468-2667(25)00164-1
[2] Windred DP, et al. Sleep (2024).https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37738616/
[3] Ikehara S, et al. Sleep (2009).https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19294949/