【最新研究】認知症のリスク因子14項目とは?Lancet 2024が示した予防可能なリスク
認知症は高齢化社会において大きな健康課題となっています。
日本では高齢者の約5人に1人が認知症になると推計されており、その予防は社会全体の重要なテーマです。
しかし近年の研究では、認知症は単に加齢だけで起こる病気ではなく、生活習慣や環境要因が大きく関与する疾患であることが明らかになっています。
2024年に医学誌 Lancet に掲載された Lancet Commission on dementia prevention, intervention and care の報告では[1]、『14の修正可能なリスク因子』が認知症の発症に関係することが示されました。
この研究では、認知症の約45%は生活習慣や環境要因の改善によって予防可能な可能性があると推定されています。
この記事では、Lancet 2024の報告をもとに、認知症の原因とされる14のリスク因子について、医学的背景を含めて解説します。
認知症の約45%は予防できる可能性

Lancet Commissionの報告では、これらのリスク因子を改善することで、認知症の約45%を予防できる可能性があると推定されています。
年齢ごとに修正可能なリスク因子
◾️若年期
- 教育歴(低教育)
◾️中年期(おおよそ18〜65歳)
- 難聴
- 高LDLコレステロール
- 高血圧
- 肥満
- 糖尿病
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 外傷性脳損傷
高齢期(65歳以降)
- 身体活動不足(運動不足)
- うつ病
- 社会的孤立
- 視力低下
- 大気汚染
認知症予防のメカニズム(Lancetが示す4つの経路)
認知症予防は単一の対策ではなく、複数の生物学的経路によって起こります。
① 血管ダメージを減らす(Decrease vascular damage)

高血圧や糖尿病、脂質異常症などによる血管へのダメージを抑えることが重要です。
脳は非常に血流への依存度が高い臓器であり、血管の状態がそのまま脳機能に影響します。
脳の血管が障害されると、
-
動脈硬化の進行
-
脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリスク上昇
-
微小血管障害(small vessel disease)
などが引き起こされます。
特に、このような微細な血管損傷の蓄積は、
-
白質病変
-
脳萎縮
-
認知機能低下
と関連することが知られています。
したがって、血管を守ることは、そのまま脳を守ることにつながります。
② 病理変化を抑制する(Reduce dementia neuropathology)

認知症は脳内に異常なタンパク質が蓄積し、それが神経細胞にダメージを与えることで進行すると考えられています。
いわば、脳の中に老廃物(いわゆる“ごみ”)が蓄積していく状態です。
代表的な病理変化としては、
-
アミロイドβの蓄積
-
タウタンパクの異常(神経原線維変化)
が知られています。
これらは
-
神経細胞の機能低下
-
神経ネットワークの破綻
-
慢性的な神経炎症
を引き起こし、認知症の進行に関与します。
さらに近年では、こうした老廃物を脳から排出する仕組みとして、グリンパティックシステム(glymphatic system)が注目されています。
これは脳内の老廃物(アミロイドβなど)を洗い流すように排出するシステムで、特に睡眠中(とくに深いノンレム睡眠)に活発になると考えられています。
睡眠中は
-
神経細胞が収縮する
-
細胞間スペースが拡大する
-
脳脊髄液の流れが増加する
といった変化が起こり、老廃物の排出が効率的に行われます。
そのため、規則正しい時間に睡眠をとるように気をつけることが重要です。
③ 炎症とストレスを減らす(Reduce stress and inflammation)

炎症は老化と密接に関連しており、近年ではinflammation(炎症)とaging(老化)を組み合わせた概念として「インフラメイジング(inflammaging)」と呼ばれています。
これは、加齢に伴って増加する慢性的で低度な炎症状態を指し、認知症を含む加齢関連疾患の発症や進行に関与することが示唆されています。
また、精神的なストレスは体内でストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を促し、免疫機能の調節異常や炎症反応の増加に関与することが知られています。
こうした慢性的な炎症やストレスは、全身への負荷となるだけでなく、脳の神経細胞にも影響を及ぼします。
具体的には、
-
神経炎症の増加
-
神経細胞の機能低下
-
神経変性の促進
などを通じて、認知症の発症や進行と関連する可能性が示されています。
炎症を増やす要因としては、
-
喫煙
-
肥満
-
睡眠不足
-
慢性的なストレス
などが知られています。
これらは体内の炎症レベルを高め、
結果として認知症リスクの上昇と関連する可能性があります。
④ 認知予備能を高める(Build cognitive and brain reserve)

認知予備能とは、脳がダメージを受けても機能を補い、認知機能を維持する力を指します。
これは、教育や経験、知的活動などによって形成されると考えられています。
脳を継続的に使う習慣は、
-
神経ネットワークの強化
-
シナプスの増加
-
脳の可塑性の向上
などを通じて、認知機能の維持に寄与します。
その結果、同じ程度の脳の病理変化があっても、
認知予備能が高い人は症状が表面化しにくいことが知られています。
認知予備能を高める要因としては、
-
教育
-
読書
-
社会交流
-
知的活動
などが挙げられます。
特に重要なのは、新しいことに挑戦し続けることです。
例えば、
-
楽器の演奏
-
語学学習
-
新しい趣味への挑戦
などは脳に新たな刺激を与え、認知予備能の維持・向上に役立つと考えられています。
つまり、日常的に脳を使い続けることが、認知症予防の重要な鍵となります。
まとめ
2024年に発表されたThe Lancetの報告では、認知症の発症には14の修正可能なリスク因子が関与しており、そのうち約45%は予防・発症遅延が可能である可能性が示されました。
認知症は単なる加齢によるものではなく、
-
血管障害
-
脳内の病理変化
-
慢性的な炎症やストレス
-
認知予備能の低下
といった複数の要因が重なり合って進行する疾患です。
これは、認知症が単なる加齢によるものではなく、日々の生活習慣によってリスクを大きく変えられる疾患であることを意味しています。